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                 覚悟の失業 17.​

 玲子は身体から力が抜けたような気持になった。あたしどうかしてた。そっと腕時計を見た。18時少し前である。 


「もう外は真っ暗ですね。長居してしまいました。あたし帰ります」


「えっ、帰るんですか?まだお聞かせしたい曲があるのですけど…」


 玲子は本当は帰る気はなかった。初めての男性の家。倫理観が頭を過っていた。しかし、そう言われて聞かないのは失礼と思い直した。


「何の曲ですか?」


「もちろん、シャンソンです。淡谷のり子です。意外とお思いでしょう?人の気も知らないでです。先程、岸洋子で聴きましたでしょう」


「ええ、せつなくて胸が潰れそうになりました」


「言葉ではうまく説明出来ないのですが、この歌の心の奥の辛さが見えて来るようです」


「是非聴かせてください」


 玲子は救いを受けたような気持だった。まだ帰りたくなかった。


「良かった!是非聞いて貰いたいです。今、掛けますね」

 池田は立ち上がった。玲子は合わせるように横座りを逆横座りに直した。そして、足をそっと擦り始めた。


 CDを出しながら池田の目に入った。二人は2時間近く聴き続けていた。


「玲子さん、足を延ばして下さい」


 見るともなしに見た足は、スラリとストッキングに包まれ、美しくもあるが肉感的でドキッとした。気付かぬふりをして、


「その前に新井英一を掛けます。心を揺さぶられる男の歌です」


 突き刺さるようなだみ声が流れて来た。叫びに近い。演奏が終わった。玲子は放心したように無言でいたが、ふと呟くように言った。


「同じ歌詞ですか?心に突き刺さるようです」


「そうです。同じです。ソウルフルでシャンソンをはみ出しています」


 玲子の目に涙が薄っすら滲んでいた。彼氏を思い出しているんだ。池田の心は妬けた。


 見ないようにして立ち上がると、黙って淡谷のり子のCDを掛けた。静に染み入るようなイントロ演奏の後、温かくせつない歌声が流れて来た。


 玲子は目を閉じていた。それを良いことに少し近づいて座った。


 ”人の気も知らないで”語りかけてくるように言葉がじわーっと心に沁みて行く。好きなのに何も言えなかった。言われるままにさよならされた。


 淡谷のり子の晩年の録音である。人生の裏打ちがされて、何も言えなかった自分の後悔とせつなさ辛さが込められている。


 曲が終わった。玲子は目を閉じたまま両手を握り締めていた。その姿がせつなくて堪らなくなった。


 池田は自分を忘れて、突然玲子を抱きしめた。玲子は抵抗しなかった。じっと俯いていた。


 それが又せつなくて、ぎゅっと身体をさらに抱きしめた。玲子が顔を上げた。その顔へ口づけをした。以外にも玲子は両手をまわして来た。


 池田は嬉しくなって、


「好きです…」


 一言言うと再び口を吸った。玲子も応じた。長い口づけだった。息をつくように離すと、


「玲子さん好きです」


 目を開けた玲子は池田に濡れたような目を向けて、


「好きです。私も池田さんが好きです」


 池田は信じられなかった。嬉しくて再び抱きしめた。玲子は両手を添えながら体を委ねた。力を抜いた身体は倒れるように寄りかかって来た。


 二人は絨毯の上に倒れ込んだ。ブラウスのボタンが外され手が入って来た。優しく撫でるように掴まれた。


 さらにボタンを外されブラジャーを持ち上げられた。明るい室内灯の中、恥ずかしかった。右の乳房を掴まれ乳首を吸われた。


 ブラジャーが邪魔になったのか後ろに手をまわして来た。背中を持ち上げるようにして協力した。


 池田の手はスカートのホックにも手をかけて来た。それは止めてと思ったが言えなかった。スキャンティ1枚にさせられた。


『良いわ、好きにして良いわ。あなたが好きなの。大好きなの』心で叫んだ。


「お願い、明かりを消して」


 池田は立ち上がると灯りを消し再び抱きしめて来た。彼は裸になっていた。最後のスキャンティを脱がされた。


 指が確かめるようにそこをなぞって来た。恥ずかしい。私、潤って来ているの。


 あっと思った時、ずんと固いものが入って来た。思わず彼の背中を下から抱きしめた。心地良さが身体中に広がっていく。


 いつの間にか声を上げていた。彼の動きも声も激しくなった。そして急に静かになった。本能に任せたが妊娠したらどうしよう。ふと頭を過った。


「玲子さん、結婚して欲しい。僕の子供が入ったよ。もう君は僕のものだ」


 玲子の細い身体はぎゅっと再び抱きしめられた。


「結婚して欲しい。お願いだ。返事して欲しい」


 苦しい程抱きしめられた。返事が出来ない。嬉しくても声が出せない。それでも必死に声を出した。


「はい」


 玲子は夢を見ているみたいだった。でもしっかり返事をした。そして思いつめたように泣き出した。泣きながら、


「でも私で良いんですか?私のこと何にもわかっていないでしょう」


「全てわかっている。これ以上何も知ることはない。それより、こんな僕で良いんですか?」


「私、紀伊国屋で本を探してくれた日から、あなたが好きになりました。あの日からあなたのことを思うと、せつなくて堪らなくなったのです」


「僕は病院であなたを見かけた時、一目で好きになりました。だから、退院したくなかった。でも運命だったのですね。ハローワークで偶然会うなんて…」


 池田は玲子を抱きしめて口を吸った。そのまま愛おしそうに両の乳房を吸い始めた。彼自身はそれに合わせるようにしっかり固く張り詰めてきた。


 玲子は再び身体を貫かれた。そこは肉感がいっぱいに動き続ける。喜びと嬉しさで満ち溢れた。

 

 これは私の物。私だけの物。きゅっと下半身に力を込めた。めくりめくような肉感がさらに続く。だんだん気が遠くなっていった。

                                                              つづく

次回18回は11月19日朝10時に掲載します